【2014年9月21日】講演会レポート:「生活を描いただけで監獄へ 旭川でおきた生活図画事件を語る」(お話:菱谷良一さん(92歳)、松本五郎さん(93歳))


2014年9月21日、講演会「生活を描いただけで監獄へ 旭川でおきた生活図画事件を語る」には会場満員の170名以上が参加しました。

「生活図画事件」とは、戦前の1941年9月20日、旭川師範学校(現在の北海道教育大学旭川校)の寄宿舎にいた菱谷さん、松本さんら美術部の学生が、治安維持法違反で突然逮捕、拘留された思想弾圧事件です。その時の生々しい様子を伝える、菱谷さん・松本さんのお話に参加者がみな聞き入りました。

講演では、まず「生活図画事件」とは何かについて、治安維持法国家賠償要求同盟北海道本部の宮田汎さんが、パワーポイントでわかりやすく解説しました。宮田さんは長年、生活図画事件について検証を続けて来た方です。

菱谷さん、松本さんは、美術部員として読書やレコード鑑賞などの様子を描いた絵が「共産主義思想を広めている」とされ、逮捕・拘留されました。劣悪な拘留生活について松本さんは「夜具はシラミだらけだった。差し入れのパンをネズミに取られてしまった」と語りました。

昨年12月に特定秘密保護法が強行採決され、今年7月には集団的自衛権の行使容認が閣議決定されるなど、今の時代の状況が当時に重なるとして、菱谷さんは「今、話をしなければと思うようになった。時代の流れに抵抗して欲しい」と語り、松本さんは「過去を知ることは今をよく生きるための鉄則」と話しました。

講演会終了後、旭川と富良野の高校新聞部・放送局の学生が、菱谷さん・松本さんに取材をしました。
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参加者のみなさんの感想をご紹介します。
●生活図画事件というものがあったことを初めて知りました。私も歌や音楽、絵など好きなので、これから未来にこんなことが起るとしたら大変困ったことだなぁと思います。原発問題も困ったことだなぁと、色々あれこれ思います。私は地図を見るのも好きなので色々 見えてくることもあります。今日は有難うございました。(40代女性)

●痛快な語り口の菱谷さん、あったかい語り口の松本さんのお陰で、とても聴きやすい講演でした。しかし、お二人が直面した、 言いがかり的な思想弾圧と、ねじ曲げられた、腐った「正義」、見聞広く、知識欲が溢れている時に強制された独居房の日々……を語り出すためには、月日を重ねる必要があったのでしょうか。今の日本は、そんな昔の日本前夜を繰返しているようで、気味が悪い。「過去を学んで、今を生きる」がしみじみ心に響きました! (40代男性)

●治安維持法を拡大解釈すれば(都合良く解釈すれば)、何だって罪にできた。それに鑑みると、特定秘密保護法は平成版の治安維持法だとも言える。民主的平和憲法を不断の努力で守りつつ、悪法を廃案、撤回させていきたいものです。(50代)

●講演後、菱谷・松本さんに対する高校生たち(15人ほど)の 取材活動を脇で聞いていました。どんな新聞や放送番組が作られるか、楽しみになりました。出来ましたら、次の「平和への伝言」に載せて下さい。(60代女性)

●お二人のお話をお聞きしまして、当時の警察を、国を許すことが出来ない。お腹の中が煮えくり返っています。涙が出ました。ユーモアを交えてのお話が救いでした。有難うございました。ご無事で良かったです。(60代)

●初めに宮田さんから図画事件の説明があったので、お二人の話が良く理解できた。時間が限られているので、お二人のプロフィールは 資料を見てもらい(省略し)、師範入学時から始めた方が良かったと思う。獄中でのこと、取り調べ方、お母さんのこと等をもっと詳しく聞きたかったから 。地元・旭川で起きたことを生の声で聞けて良かった。「完全な冤罪であったこと」「誰も経験する可能性があったこと」を知ることができた。この事件は 「共産党は怖いものだ」という観念を旭川の人々に植え付けるために仕掛けられたものだったようにも思う。安倍の「戦争できる国づくり」を早急につぶさなければ…と感じた。出来ることから行動し始め、連帯し合って平和な国をつくろう。お二人には長生きして、いろいろな地域でお話していただきたい。(60代女性)

●恥かしいですが、この事件のことは今日初めて知りました。有難うございました。ユーモアがあり、全体の進め方がすごく上手で、びっくりしました。 (60代)

●すばらしい企画です。現在の状況や歴史の真実を特に若い方々に伝えることが大切だと思う。(60代)

●自分たち(当局)の都合のいい解釈で弾圧を続けていった 過去の体制や特高が犯罪をでっち上げていく過程がよく分かりました。実に恐ろしい。そんな時代は再現させたくないものです。93 歳という高齢のお二人の弁、分かりやすくしっかりした口調でした。魅力的なひと時でした。いつまでもお元気で、これからの若い人たちに、当時の話を聞かせて欲しいと思います。松本先生が 17年間勤められていた 中標津町立西竹小中学校に6年間勤務しました。その学校も今年度で閉校になり、残念です。先生にも西竹でお会いしたことがあります。お懐かしい限りです。(60代)

●大変貴重な経験を得られたことを大切にしたいと思います。カクシャクとした お姿の中に、戦争に対する憎しみも感じられました。平和に対する思いがひしひしと伝わってきました。お二人を罪人に仕立て上げたような不条理がまかり通る世の中にしてはならないと思いました。(70代)

●松本五郎さんへ。訥々と語られるお話、涙しながら聞きました。 理不尽にも教員免許をもらえなかった、いわば「前科者」が、地域の人たちによって「我等が学校の先生」になっていった経緯を詳しく知りたかったです 。控えめな松本さんだから、あまり話したがらないようにも思われますが・・・。鳥取の高等小学校の教育が松本さんの背骨になっているように思いました が、的外れでしょうか。安倍政権の「戦争する国づくり」に抗する、毅然とした姿勢を強く感じました。よく旭川に来て下さいました。 足が少し不自由になっているように感じられましたが、健康に留意され、これからも多くの人たちに図画事件の真相を語り伝えていただきたく思います。 本日は本当に有難うございました。(70代男性)

●本当に93 年の人生、大変でしたね。私たちは皆さんの犠牲のお陰で、平和な日本で過ごしてきました。この平和がいつまでも続きますように、今度は私たちが頑張らねばなりませんね。有難うございました。(70代女性)

●体験なさった方から直接お話を聞く貴重な機会を持つことができて、感謝します。何が秘密か分からない秘密で罪になる法律が日本に存在することは、とても恐ろしい。お二人とも、もっと長生きなさって、菱谷さんがおっしゃったように、若い人にお話する機会を持って下さい。(70代女性)

●思想統制を強めるために治安維持法の違反者を無理やり実在化させようと、暴力的な取調べが行われたということが、講師の方々の発言から推測されました。(80代男性)