湯浅誠さんDVD


2010年5月に札幌でグリーン九条の会http://green9zyo.blogspot.com/)が「年越し派遣村」の「村長」として活動した湯浅誠さんを招いて行われた講演会のDVDです。
運営委員会でこのDVDを視聴しました。

湯浅さんは、大学在学中からホームレス支援にかかわり、「自立生活サポートセンター・もやい」を設立して活動しています。

今回の講演では、日本での「貧困問題」に社会の目がむけられるようになり、私たちがこれからどのように社会をつくっていったらいいかを示唆するわかりやすいお話をされています。非常に良い講演でおすすめです。

<感想>

■とても分かりやすく、共感出来る部分が多くて心に響くことが多かったです。
「溜(ため)」の例え話は分かりやすく、溜池に水が無く稲に水が無い状態では「頑張れ!頑張れ!」と言っても日照りで枯れてしまう。その比喩にとても共感出来て、そんな精神論でどうにかなれば既に問題は解決できているとは思います。
たぶんそれは、湯浅さんが言っていた自己責任論ならぬ「他己責任論」から派生した考え方なんでしょう。

確かに一個人がある程度のレベルだったり、クオリティや量をこなすのも必要だけど、それと同時に最も大事なのがやはり社会全体が、1から10までの間で例え2つや3つ出来なくても出来る所を伸ばして補い合う、そんなシステム作りが「ひとりひとりの力を最大限引き出せる」社会を作っていけると、そう本当に僕は思います。

湯浅さんの講演は、これからの日本を作り、支えていかなくてならない特に20・30代の世代に見て頂きたい講演だと思いました。
もう既に周りの人達を見ても、貧困における社会格差を感じざるを得ない出来事が身近に起きています。それについてはここでは省略しますが。
既におかしくなっているこの日本を放ったらかしても大変、変えていくのも大変。どうせ大変なら、少しずつでも変えていこうよという考え方はとても同感です。

最後に憲法25条の生存権と憲法9条の戦争放棄、これを両セットで考えていかなければならないとおっしゃっていたその考えもそうだなと納得しました。
特に日々平穏ではない生活を送っている方々には、心に響いてこないのだろうなと思いました。
まだまだ書きたいことがありますが長くなりますので、この辺で最後にしたいと思います。

■ ユニセフの統計で「さびしい、ひとりぼっちだ」と感じる子どもの割合が、先進国の中で日本がずば抜けて高い、というところから湯浅さんのお話は始まりました。また日本での自殺者は毎年3万人を超えています。自殺する人はみな「こんな自分でごめんなさい」と言って死んでいく、「こんな社会だから一人で生きていけるようがんばらなきゃだめだ」という言葉があふれている中で、弱い者が追いつめられています。

ILOによれば、日本では、失業者のうち雇用保険でカバーされる率は23%しかない、といいます。アメリカですら40%というのですから、ひどいものです。また、生活保護基準以下の収入の人が生活保護受給者の2倍いるそうです。湯浅さんは「日本は公的セーフティーネットが弱い」と言っています。失業しても失業給付を受けられないし、さらに、最後の砦である生活保護すら半分の人しか受給できないのです。そして「その公的セーフティーネットの弱さを、日本では企業と家族がカバーしてきた」と。しかし、「その、国の傘の下にある企業の傘、家族の傘もしぼんでいる」と指摘します。

「貧困問題はいままで社会の死角だった、そこに存在していた問題なのに見ようとしないから見えなかった、スポットライトがあたっていなかった」、福祉国家として「スポットライトを増やしていかなければならない」、そして、「ずっと光を当て続けてくれているはずの家族や友人がいなくなって孤立してしまった人達を『気づかう』人が社会にいなければいけない」と言っていました。
私たちができることは何か、それは、ため池がないことで枯れてしまった稲に「気の持ちようだ」「がんばれ」というのではなく、自分たちで共同してため池をつくること、それと同時に、政府にため池を作らせることだと思います。
最後に湯浅さんが触れたのは、「9条」と「25条」の問題でした。「9条を守らないと平和じゃなくなって25条を守れないよ」と言っても、もうすでに平和でない生活をしている人にはひびかない、「25条を守らないと平和な暮らしはできないよ」と言わなければならないということです。このことは、2年前に行われた九条の会全国交流会で、各九条の会が「9条と25条をセットでうったえている」と報告していたこととも重なります。
ぜひ、世代を越えて多くの方々に聞いて頂きたいお話でした。